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というわけで、全ての仕事を片付け、
ニューヨークで治療に専念中である。
おかげで治療の効果は認められるが、
治療自体が体を痛めるので、それとの闘いでもある。
ところで「自然治癒」という非常に魅惑的な記事を、
たくさんインターネットで見かけるし、
親切にそのような情報を送ってくださる方もいる
(この自然治癒=natural healingという言葉は、
代替医療=alternative medicineとほぼ同じ意味だと思うが、とても曖昧。
これでは放っておいても治ってしまうともとれる。
ちょうど自然エネルギー=natural energyという
日本以外では使われない言葉は、
再生可能エネルギー=renewable energy
と言った方が正確なのと似ている。
natural energyでは、自然自体がもっている
エネルギーということになり意味が違ってしまう )。
元々この20年「自然派」であった僕は、
この間ほとんど西洋医療のご厄介にならず、
何かあれば整体、足湯、食事療法、断食、漢方、
お灸などでしのいできたので、
自然治癒=代替医療に関する記事をあながち嘘だとも思わないし、
それで治るならこれに越したことはないと思っている。
しかし、ステーブ・ジョブスの死になぜかかなりショックを受けた僕は、
彼が自然治癒=代替医療に固執せず、
より早く西洋治療を受けていたらあの若さでは死ななかっただろう
(それは当然、検証のしようがないことだけど)
という意見を目にし、そうだったかもしれないと思った。
それもあって、僕は代替療法に関しては懐疑的ということはないが、
効果がある場合とない場合があるのでは、と思っている。
現在の僕の状況を見ると、効果がないということは、このまま癌が増殖し、
近くにあるリンパ節を通して全身に転移する可能性がある、
ということを意味する。
そのように生か死かという状況に置かれた時に、
人は果たして効果があるかないか分からない手段を選ぶことができるか。
最近よく思うのは、これが1970年頃だったら、
ぼくは治ってないかもしれない、ということ。
高校や大学の頃、40代、50代という若さで亡くなった
叔父たちを見舞いに行ったことを思い出す。
「龍ちゃん、死にたくないよ」と泣いていた。
僕は何も言えなかった。
坂本龍一
2014 0810
■ JOURNALSAKAMOTO+ ■ Vol. 201
(via akrskzw)

